【吹奏楽名曲紹介】ラッキードラゴン 〜第五福竜丸の記憶 (福島弘和)

「ラッキードラゴン」ざっくり解説

1954年のビキニ岩礁での水爆実験で被爆した第五福竜丸を題材にした絵本から着想を得たという、福島先生の代表作とも言える作品。重いテーマを持ちながらも希望を感じさせるラストとなっており、幅広い層に支持されています。

2009年にこの作品を委嘱した埼玉県の春日部共栄高等学校が全国大会金賞を、翌年に創価グロリア吹奏楽団が同じく金賞を受賞し話題となりました。毎年のように全国各地で演奏されている、吹奏楽のスタンダードの一曲です。

「中高生でも演奏しやすい福島先生の代表作」

この曲には「第五福竜丸のことを音楽を通して知ってもらいたい」という福島先生の思いが込められています。したがって、中高生バンドでも演奏しやすく、無理なく鳴らせる優しい工夫が随所に施されています。

もちろん難しい箇所もありますが、全体としてサウンドが安定しやすく演奏効果も高くなるようなスコアだと思います。そして、何よりも「全てのパートにやりがいがある」そんな曲です。コンクール自由曲としてだけでなく、演奏会のメインや教材としての利用もできる素晴らしい作品です。

「ラッキードラゴン」名盤・名演

「全てはここから始まった」2009年 春日部共栄高等学校 都賀承太郎指揮 金賞

「この演奏なしにこの曲は語れない!」そんな絶対的な超名演です!近年は様々な味付けがされるようになった「ラッキードラゴン」ですが、この演奏がスタンダードでありまさに王道です!

オーボエソロをはじめとする木管群、鳴らし過ぎないけど「ここぞ!」の場面でキッチリ吹いてくれる金管群、歌心のある打楽器……いつ聞いても本当に素晴らしい演奏です。

音源としては、駒澤大学高等学校の「くじゃく」も収録されているこの大会音源がオススメです。修道高等学校によるネストリアンモニュメントも入ってて楽しいです。

大会の動画としてはDVDですがこの金賞団体の映像を集めたものが基本になります。

春日部共栄にフォーカスするなら絶対にこれをゲットしましょう!鳳凰が舞うや祈りの鐘といった春日部共栄の名演がずらっと揃ってます!管楽合奏コンテストやコンサートの映像も収録されており、吹奏楽の人気曲がたくさん入ったお得なDVDです。

「充実のサウンド!」 2010年 創価グロリア吹奏楽団 中村睦郎指揮 金賞

春日部共栄の演奏の翌年、この曲の人気を不動にしたのが創価グロリアの演奏でしょう。大人の余裕と言いましょうか、ダイナミックかつ洗練されたサウンドは、大変見事です。

近年も名演が生まれているこの曲ですが、技術の向上が著しい現在においてもやはり、春日部共栄と創価グロリアの演奏がイチオシです。

創価グロリアのラッキードラゴンのほかにも、ブリジストン久留米のディオニソスなど、激アツな大会公式CDです。

2010年の金賞が大集合しているDVDです。画質はよくありませんが、映像だと新たな発見があって面白いですね。

演奏について 〜読者の皆様から〜

コスパの良い名スコア

中高生向けに書かれたとあって、難易度自体はそこまで高くはありません。金管の音域も実用範囲に収まってます。トランペットのハイCも、初演当時とは違い中高生でも一般的になりつつありますね。

序盤の神秘的な場面は、しっかりと拍子が書いてありますが、拍感を感じさせない雰囲気作りが重要です。指揮者も奏者もよく打ち合わせが必要で、緊張感がポイントになります。

オーケストレーションはよく「鳴る」ように音が積まれているように感じられます。演奏会など大人数で演奏する際は音が飽和しないよう注意したいところです。逆に言えば、コスパの良いオーケストレーションでもありますね。

演奏しやすいこの作品ですが、中間部のクラリネットを中心とした細かいパッセージの応酬が鬼門の一つです。ここさえキメれば怖くないので、時間をかけて詰めたいところです。

全てのパートが美味しい作品であるゆえに、主旋律なのか?伴奏なのか?どのパートを目立たせるのか?というバンド全体での意識の共有と演出が必要でしょう。比較的、演奏しやすい上に演奏効果も高い非常に優れた吹奏楽作品なので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?