全体でのチューニングが終わったら、バランス練習に取り組んでみましょう。
バランスって何?
バランス練習はいわゆる、バンドのサウンド作りにあたるものです。昔ながらの吹奏楽ではピラミッド型、ポップスではスクエア型など色々な考え方がありますが、バンドとして基準となるサウンドのことを指すとざっくり考えてください。
この時に、低音域Aグループ、中低音域Bグループ、高音域Cグループ、超高音域Dグループというように、各音域をどれだけ響かせて音を積んでいくか?という考え方で整えます。
とりあえず低い音域ほど響きを充実させる!
豊かなサウンドという曖昧な表現がよく使われる吹奏楽ですが、とりあえずABグループのサウンドを分厚くしておくのが大切です。倍音によってサウンドが充実するという面もありますが、どんなジャンルの音楽でも低音域と中低音域が充実していると、高音域にありがちな耳に直接的に響くような不快な音が激減します。
何よりも、CグループやDグループの人たちが吹きやすくなるというのがメリットです。特に、トランペットと木管楽器群は同じグループですが場所が離れることが多いです。そうした時にBグループが橋渡しとなり、Cグループの奏者・サウンドをよりまとまったものにしてくれます。
どんな練習をするの?
教則本や学校・先生によって指導の仕方は様々ですが、B♭、A、G、Fの四つの音を使って行うケースが多いです。低音のAグループからベルトーンのように、二拍ずつ音を重ね、八拍かけてDグループまで重なったら四拍伸ばすというのを、B♭からFにかけて行い、最後に再びB♭を吹くというものです。
このバランス練習をやる際も、倍音を意識できると非常に効果があります。Bグループが入った瞬間にグッと倍音が増えるとCDグループが楽に吹くことができます。
見落としがちな注意点 発音
よくある練習のため、マンネリ化してしまいがちなこのバランス練習ですが、多くのバンドが見落としている事柄を紹介します。
まずは、発音です。グループごとに音のアタックを揃える事は最優先事項の一つですが、どうしても音程や音質に耳が傾いてしまいがちです。たかがバランス練習ですが、是非とも基礎合奏の一番初めにやるこの練習から発音に気を配って欲しいものです。
グループごとに発音を揃える上で、パートリーダーやトップ、コンマスのような役割の人がブレスやザッツを(不自然でない程度に)出すというのも効果的です。とにかく、曲で出てくる音符のようにしっかりとテンポに沿って発音を揃えましょう。
見落としがちな注意点 音の形
上に述べた発音と似たものですが、一人一人の一つ一つの音の形も非常に重要です。やはり発音をした時からしっかりと正しい音程で吹くこと。発音した後で音質や音程がブレないことが重要です。
基礎合奏とはいえ、しっかりと正しい音で発音し、音をまっすぐに伸ばす、ずれていたら瞬時に修正するという個人の基礎能力は前提条件となってきます。基礎合奏を通して基礎力を上げていくのも良いですが、基本的な演奏技能を身につけた上で基礎合奏を行うと効率が良いですね。
もちろん、音のキリも揃えましょうね。
見落としがちな注意点 音のねらい
やはり、これも基礎力が物を言いますが、音をしっかりと狙うという行為は非常に大切です。BCDグループは前までに入ってくれるグループや倍音を指針としてねらいを定めるのが大事です。
では最初に入ってくるAグループはどうしましょう?これは指揮台の人が、各音と音との間に4拍間を設けてハーモニーディレクターで次の音を提示してあげると良いです。慣れてくればなくても良いですが、正しいバランス練習に導けるよう、指揮台からサポートしていけると良いです。
見落としがちな注意点 スケール
このバランス練習は実は「スケールの半分」を使った音列で作られています。そうした中で、次の音が全音下なのか?半音下なのか?という点を意識して吹けると練習効率が格段にアップします。
このバランス練習の次に多くの場合スケール練習を行うと思いますが、この際に気をつけたいのが音と音との幅、インターバルです。バランス練習の時からこのインターバルに気を使っておくと、良い訓練になります。
もちろん、スケールの半分で行なっているバランス練習を2倍にしてスケールそのものにしても良いです。しかし、個人的にはドミナントの考え方や奏者の技能と体力面から考えて、スケールの半分で音四つで行うのが無難だと思います。スケールでやりたいときは四つずつスケールを2分割した上下で行うと良いでしょう。
まとめ
- バランス練習はバンドのサウンド作りの基本であり基準となる
- 音域ごとに音を重ねていき、倍音を含んだ聴きやすいサウンドにする
- 低音域、中音域の充実が近道
- 個々の奏者の基礎がある程度安定していることが重要
- 発音や縦にも注意を払い音を狙う
- スケールの半分という意識を持つとバリエーションが増える
番外編:スクエア型?ピラミッド型?
吹奏楽の伝統的なセオリーとして低音から高音までをピラミッド型のサウンドを構築するのが良いというものがあります。これは、サウンドの安定感や倍音を意識した結果としてのセオリーと言われており、この形をイメージしてサウンド作りに取り組むバンドが多数派と言えます。
一方で、いわゆる吹奏楽ポップスと言われているジャンルではスクエア型が推奨されるようにもなりました。確かにJ-popなどのジャンルのアレンジではCグループやDグループに主旋律が多く、その声部をサウンドのメインに据えた方が安定する気もします。
個人的な意見ですが、吹奏楽ポップスの時にスクエア型を意識した方が良い理由としては、エレキベースとドラムセットの使用という観点が大切だと思います。もちろん、ポップスのオーケストレーションの都合もありますが、リズムセクションとされベースとドラムの使用が、クラシカルなスクエア型とサウンドを差別化すべき大きな要因です。
もちろん、バランスは楽曲の中で曲調や発音によって変動しますが、目指すべきサウンドの一つの指標としてのジャンルわけはとても有益だと思うので、少し頭に入れてみると良いでしょう。