世界で人気の吹奏楽スタンダード
世界的に有名な日本生まれの吹奏楽作品で、多くのファンがいる名曲です。正式なタイトルは「The Seventh Night of Juluy」で、デ・ハスケ社から出版され世界中でヒットしました。
親しみやすい旋律とシンコペーション、急緩急の王道の形式などといった世界的にも吹奏楽のオーソドックスな内容ですが、吹いても楽しい、聴いても楽しい作品です。
なんと酒井先生が高校在学時に作曲した作品だそうで、若い人からも支持される理由は、高校時代の夏を感じさせるタイトルと曲の雰囲気にあるのかもしれません。金管五重奏バージョンなど、作曲者本人によるアレンジもあるので聴いてみると非常に面白いです。
全ての楽器が活躍するアメリカ的オーケストレーション
王道のファンファーレからのアレグロ
冒頭の直管楽器のファンファーレから始まり、金管の豊かな響きからのアレグロ突入、木管楽器のコミカルなリズムという、オープニング印象的な出だしを聞いただけでワクワクする作品です。
そしてホルンやサックスによって奏でられる素直で伸びやかな主題は、楽しげなリズムや伴奏とともに歌われます。オーケストレーションがは厚いので歯切れの良さと機動力が求められるアレグロです。
優美な中間部
第二主題はホルンの裏メロが泣かせます。ホルンがよく鳴り、吹きやすい音域で書かれた裏メロの使い方は非常にアメリカらしい響きがします。
呟くようなアルトサックスのソロに導かれて、そのままサックスがソロを吹く中間部は、しっとりとした優しい雰囲気で、はつらつとした前半との対比がよく表されます。
伴奏部も非常に厚く書かれているのですが、要所要所でトゥッティとしてまとまって歌い上げるポイントが出てくるのが、この曲のミソとも言えます。
再びアレグロ・フィナーレへ
突如としてシンコペーションの上昇系パッセージから始まる後半は、各楽器のサウンドを見せるこの曲の見せ場の一つです。技術的にも少々難しいですが、しっかりキマるとかっこいい場所です。
転調を経て再び主題が奏でられ、アレグロでありながらも非常に美しく、落ち着いた旋律のリレーが行われます。そしてユーフォニウムの旋律に導かれ、シンコペーションの応酬を経てフィナーレに向かいます。
フィナーレは木管楽器の連符と金管楽器の主題をメインに構築されており、それぞれの主題が奏でられ怒涛のラストを迎えます。
全ての楽器に仕事がある名スコア
この作品の醍醐味はやはり、そのオーケストレーションでしょう。吹奏楽の本場であるアメリカでは吹奏楽が授業カリキュラムに含まれており、教育的な配慮として全ての楽器が活躍し楽しめることに着目されて曲が書かれます。
若き日の酒井さんがそれを意識したかはわかりませんが、この作品はスウェアリンジェンやバーンズなどとどことなく通じるようなオーケストレーションであるなと私は思います。
そこに、日本の七夕伝説や日本語的な親しみやすく長いフレーズといった、親しみやすさが加わったことが大ヒットの大きな要因かと思います。
参考音源
頻繁に演奏される作品であるからこそ、オーソドックスな演奏をしてくれる東京佼成ウィンドオーケストラの演奏をお勧めします。