【吹奏楽名曲紹介】パガニーニロスト・イン・ウィンド (長生 淳)

数多くの作曲家が魅了されてきた「パガニーニの主題」を長生先生が現代吹奏楽で紡ぐ、個人的に大好きな作品です。

元々は、サックスの須川さんのために書かれた、ピアノとアルトサクソフォーン2本による「パガニーニ・ロスト」という作品であり、それを東京佼成ウィンドオーケストラのために編曲されたのがこの作品です。

東京佼成仕様ということで、各パート一人ずつでも演奏できるように、それぞれのパートがなるべく等しく活躍するように、ということを念頭に書かれたため、難易度は大変高いものとなっています。

巧みに隠された主題

パガニーニはロマン派の作曲家であり、バイオリンのヴィルトゥオーゾであり、そのバイオリン独奏曲「24のカプリス」の24番目の主題は多くの作曲家が魅了され、ブラームスやリスト、ラフマニノフだけでなく、吹奏楽の巨匠バーンズなども変奏曲などを書いています。

この長生先生の作品も同様の主題に基づいた作品ですが、主題がそのまま明らかな形では登場せず、ある種の断片や和声の一部として霧の中に隠されるように姿を見せます。

それについて作曲者は、原曲の委嘱者である須川さんの音楽における姿勢や、今の世の中で失われがちな大切な何かを追い求める気持ち、そして、菱山修三の詩である「Paradise Lost」という着想によるそうです。

演奏について

東京佼成ウィンドオーケストラのために作られたということは、すなわち、一人一人が活躍する譜面であり、相当な技術が求められているということです。

木管群に力があり、とりわけサックスにスタープレーヤーがいるならばぜひ挑戦したいところですが、金管打楽器ともに長生さんらしい技巧的なパッセージが散りばめられているので注意が必要です。

また、ハープが非常に重要な役割を担っておりますので、しっかりと対策が必要です。

しっかりと練習すれば吹けるかと言われれば、そうでもない譜面が多くのパートにありますので、技術に自信があるバンドにチャレンジしていただきたい作品です。