「宇宙の音楽」ざっくり解説
「ハイハイかっこいいかっこいい!」以上です。ひと昔前はそんなにメジャーではありませんでしたが、今では手の届く憧れの曲の一つではないでしょうか?
邦題には様々な議論がされており、原題のイメージを優先するのであれば、「天球の音楽」、「天体の音楽」という方が近いのかもしれません。しかし、やはり「宇宙の音楽」という名前のインパクト性もあり、こちらの方が親しまれている印象がありますね。
一応、古代ギリシアのピタゴラスとその周辺の派閥の人たちの「天球の音楽」という概念に着想を得てスパークが宇宙の誕生から未知の世界までを描いた作品となっています。
元は2004年に欧州ブラスバンド選手権を5連覇中であった、ヨークシャー・ビルディング協会バンドの委嘱作品で、大会では195点で6連覇と成し遂げました。
それを吹奏楽の編成にスパーク自身によって編曲されたものが、2005年に当時の大阪市音楽団と山下一史の演奏によって初演され、名盤として親しまれています。
「現代的な宇宙の描写と美しいハルモニアと圧巻のラスト」
作品は7つの部分に分かれていて、続けて演奏されます。「t=0」、「ビッグバン」、「孤独な惑星」、「小惑星帯と流星群」、「天球の音楽」、「ハルモニア」、そして「未知なるもの」というブロックに分かれ、宇宙を連想さえるような様々なサウンド、メロディが奏でられます。
「t=0」は吹奏楽ではフレンチホルンが緊張感あふれる「どソロ」を奏で、「ビッグバン」に突入します。ホルン吹きにとって大きな見せ場です。ビッグバンでは荒れ狂う拍子とともにエネルギッシュに音楽が進んでいきます。
クラリネットソロに始まる「孤独な惑星」では、木管楽器を中心とした物憂げなソロ回しが展開され、叙情的な旋律が歌われます。大変美しい場面です。
「小惑星と流星群」ではコミカルな場面と雄大な場面や爆音などが目まぐるしく展開されます。
そして、作品のテーマである「天球の音楽」がエコーのように響き渡り、感動的な「ハルモニア」へと音楽は進みます。
「ハルモニア」でクライマックスったその瞬間、爆発的な打撃音ととともに、「未知」に突入し、ジェットコースター顔負けの圧巻のラストの突入します。
古代ギリシアと宇宙の音楽
この作品は、ピタゴラスによる「宇宙は、振動数比率が単純に整数倍である音程によって形成される純正な音階と同じ法則によって、その調和が保たれている」という難しい理論から成り立っています。
その音程比率は当時肉眼で観測できた6つの星(水、金、地、月、火、木の六つとされた)の太陽からの距離に一致するとされ、「それぞれの惑星は固有の音を発し、絶え間なく”天上の音楽”を紡ぎ奏でている」とピタゴラスは論じており、作品中の「天球の音楽」にそれは反映されています。
古代ギリシアからの着想は「ハルモニア」にも見られます。この単語は現代のハーモニーや和声とは意味合いが異なるので注意が必要です。
「ハルモニア」は音階や協和音程を表し、その完成美を極めたものを宇宙の本質と結びつけて使われた言葉とされています。
この作品の着想に関わる古代ギリシアの理論は「天球の音楽」と「ハルモニア」という、この作品随一の見せ場に現れる重要な要素です。
「宇宙の音楽」 名盤・名演
「吹奏楽版初演!」 大阪市音楽団 山下一史指揮
初演ということもあって、熱の入りが他の音源とは違う名演です。伝統ある大阪市音による世界的にも人気の音源だと思います。
海外の作曲家にとって大阪市音は憧れの一つだったのでしょうか?90年代、2000年代は名盤が多い気がしますね。
エネルギーも歌心も十分で、色々と工夫され表現されている演奏で聞いていて楽しい音源です。
「本人指揮によるスパーク祭りのシエナ」 P.スパーク指揮
比較的新しい音源で、スパークに関する音源の決定版とも言える名盤です。丁寧な演奏で心地よい演奏が特徴です。