【吹奏楽名曲紹介】ウィンドオーケストラのためのマインドスケープ (高 昌帥)

「マインドスケープ」ざっくり解説

心象風景という名の名作

A-Winds奈良アマチュアウィンドオーケストラの委嘱で作られ、作曲者本人による指揮で初演されました。2008年には日本吹奏楽指導者協会「下谷奨励賞」を受賞した名作として知られています。「心象風景」と訳される題名の通り、精神的な静と動、急と緩といった二面性が対比されており、それでいてそれぞれが有機的に繋がるという、非常によくできた作品です。

2007年に千葉県の柏市酒井根中学校と柏市立柏高等学校が演奏し金賞をとったことで爆発的にヒットしました。邦訳すると「心象風景」となりましょうか、大変ドラマティックな作品です。高先生の吹奏楽界におけるある種のターニングポイントとなった名曲で、最近では指揮者の下野竜也さんが広島ウィンドとレコーディングしたことで話題となりました。

本来は15分ほどの作品ですが、コンクール自由曲としてのヒットもありコンサートでもカット版を演奏する団体も多いように思います。まあ、賛否はあるでしょうが非常に難しい曲なので仕方がないでしょう。

「荒れ狂う情動と感涙のコラール!」

「マインドスケープ」の大きな魅力の一つは、暗く躍動する前半の「急」と木管主体のメロディに導かれる後半の「緩」の対比にあります。コンクールカットではこの対比が大変わかりやすく演出されており、吹きごたえもバッチリです。

高先生はトランペットを吹いていたこともあり、ご自身曰く金管に優しく木管に厳しいらしいです。ただ、先生の作品のホルンはなかなかエゲツないでしょう笑。オーケストレーションが独特で難しいので、先生の作品は音変えをするバンドも多いようですが、それだけ魅力的だということでしょう。

実は「急」の部分は12/8拍子で書かれており、現代的な複合拍子のアナリーゼが必要です。譜読みは大変そうですが、それに見合う価値の十分にある作品でしょう。

「マインドスケープ」の名盤・名演

コンクールカットも良いですが、やはり全曲盤を聞くべき。

アカデミックに味付けされた正当なマインドスケープが楽しめる、両者ともに名盤です!ぜひ聴き比べを!

演奏について 〜読者の皆様から〜

結局全パート大変

ご本人曰く、「自分は金管に優しい」とのことですが、どのパートも大変技巧的に高度な物を求めれますし、なかなか指揮者泣かせな作品です。

高先生の作品は木管のフィンガリングが難しいのですが、ダブルリードやサックスに名手がいれば大変な演奏効果を産んでくれる作品です。クラリネットやフルートは訓練をすればどうにかなりそうです笑。

12/8拍子というこで、聴いていたのと拍子が違う!的な違和感を納得できるなら挑戦しがいのある曲です。

ただし、「ウィンドオーケストラのための〜」と題してあるように、どの瞬間も「サウンド」として成立していなければ聴かせる演奏にするのは至難の技でしょう。

全曲版を演奏する際は、大変な緊張感と集中力が必要な作品です。特にコンクールカットでは演奏されない部分で、いかにお客さんを引きつけられるかが大きなポイントになりそうです。