【吹奏楽名曲紹介】吹奏楽のための交響詩「ぐるりよざ」 (伊藤康英)

「ぐるりよざ」ざっくり解説

吹奏楽の作・編曲でお馴染みの伊藤康英先生の代表曲の一つで、「叙情的〈祭〉」と並んでよく演奏される曲です。海上自衛隊大湊音楽隊の委嘱作品だった「叙情的〈祭〉」を指揮した岩下章二隊長が長崎の佐世保音楽隊長に転任した際に委嘱されたのが「ぐるりよざ」です。

「叙情的〈祭り〉」では青森のじょんがら節などがテーマとして使われ、「ぐるりよざ」では長崎県生月島の隠れ切支丹による「オラショ」や「長崎ぶらぶら節」という民謡がテーマとして使われています。

「隠れ切支丹のオラショから着想を得た名曲」

「オラショ」とは、長崎県生月島の隠れ切支丹たちが、ラテン語の祈りの言葉を日本語のお経のように聞こえるように工夫された独特の宗教文化のことです。ラテン語の語源は「Oratio」すなわち「祈り」を意味しています。

「ぐるりよざ」という単語も「Gloriosa」すなわち、「栄光」を意味する宗教的な概念が源流です。

曲は三部構成となっており、Ⅰ〈Oratio 祈り〉では男声合唱から始まるオラショが、Ⅱ〈Cantus 唄〉では「さんじゅあん様のうた」を元にして独特の世界が、 Ⅲ〈Dies festus 祭り〉では民謡を元にした展開ののち、輝かしいフィナーレが奏でられます。

隠れ切支丹という独特な歴史と文化を、西洋の吹奏楽という演奏形態、シャコンヌやフーガという音楽を見事に融合させた作品の一つで、真島先生の「三ジャポ」と並んで世界中で演奏されている名曲です。