「風紋」ざっくり解説
課題曲史上というより、日本の吹奏楽史上もっとも演奏されている曲の一つである、保科先生の代表作です。近年は演奏会やイベントなどで〈原典版〉が演奏されることが多くなりましたが、1987年の課題曲として大変なヒットとなりました。
キングオブ課題曲とも言われている作品ですが、現在では原典版からこの曲を知る人も多いように思います。いずれにせよ、日本でもっとも幅広い世代から支持されている曲であることに間違いありません。
やはり、シエナの音源が素敵です。
「指揮者とバンドの個性が滲み出る名曲」
この作品はなんとも形容しがたい魅力が詰まった作品ですが、やはり指揮者およびバンドの解釈というのが一つのポイントだと思います。
近年では、吹奏楽曲のスタンダードとなったこともあり、マイルドな良くも悪くも「普通」な演奏が多く聞かれますが、当時の課題曲としての演奏は非常に個性に富んでおり興味深いものがあります。
「失われたスコアと原典版」
「風紋」の作者である保科洋先生は、この曲を課題曲として長くも5分前後に収めるべく、大変な苦労をなさったそうです。そして、最初に書いた初稿の版はご本人曰く、紛失してしまったそうです。
したがって、現在演奏されている〈原典版〉も実のところは課題曲としてのヒットの後、作曲した当時の記憶を頼りに書かれたものだそうです。
演奏のポイント
どことなく不思議な雰囲気が作品のこの作品ですが、和声も構造もしっかりとしたものを持っています。
ただ音を並べるだけでなく、オーケストレーションとバンドの特性を相談してサウンド作りを楽しんで演奏していけたら素敵だと思います。
ミステリアスな雰囲気ながらも、エネルギッシュで情熱的な部分も合わせ持つ作品なので、後半のクライマックはしっかりと鳴らしたいものです。
技術的にとてつもなく難しいことは要求されず、とにかくバンド全員での「表現」がポイントとなります。どの声部に着目するのか?どの音色をチョイスするのか?しっかりとこだわりたいところです。