グラールウィンドオーケストラによる2007年の委嘱作品で、ソナタ形式を用いて書かれており、天野先生の交響曲第1番「グラール」の一楽章としても知られています。
天野先生によれば、「最近の吹奏楽作品には、標題音楽、描写音楽が多くなっています。このこと自体は決して悪いことではありませんが、その作品が何かを描写していないと音楽表現ができないというケースが多くなっているような気がします。」と警笛を鳴らした上で、「具体的な表題を持たない絶対音楽からも大きな感動を得られる」。「純粋に音と音との繋がりが聴き手の表層意識、感情意識を突き破って『コア』を揺さぶることができるのも音楽の素晴らしさだ」とコメントしています。
作品の命名はグラールウィンドオーケストラに与えられ、公募の結果「幻影」という曲名になったそうです。
形式美とエクリチュールに裏付けされた圧倒的なサウンド
メロディーメーカーとしても定評のある天野先生ですが、この作品は天野作品の魅力をそのままに現代的な音の運びで聞かせる作品です。
「絶対音楽」にこだわったこの作品は、決して親しみやすい旋律ではないものの、ソナタ形式に由来するラストの感動、非常に考えらたオーケストレーションの積み方によるサウンドはこの曲ならではのものです。
コンクールを念頭に置かれた作品らしく、全ての楽器に見せ場があり非常に吹きごたえ、聞きごたえがある名作中の名作です。
「幻影」 名演・名盤
「絶対的な名演」 2007年 グラールウィンドオーケストラ 佐川聖二指揮 金賞
筆者が本当に好きな演奏です。グラールウィンドオーケストラが演奏した「ブルースカイ」と「幻影」を聞いて私はこの団体のファンになり、交響曲第1番のCDを購入してしまいました。
佐川先生の歌心はさることながら、課題曲のマーチから圧倒的なサウンドで度肝を抜かれました。とにかく、聞いた方が早いです。豪華絢爛な演奏です。
今ではCDなどの音源が入手しにくいのですが、DVDだとまだあるようですね。