「シネマ・シメリック」ざっくり解説
架空の映画音楽
「シネマ・シメリック」は吹奏楽界の巨匠、天野正道先生による架空の映画のための音楽です。近年コンクールでよく取り上げられ話題となりました。
冒頭の打楽器によるクレッシェンドでお客さんを一気に天野ワールドに引き込むこの作品は、映画のように様々な場面を演出しながらクライマックスの「天野節」に持っていくという、コンクールだけでなく演奏会でもお客さんをバッチリ感動させる曲です。演奏しやすさも人気の一つでしょう。
「エモい天野節が帰ってきた!」
日本の吹奏楽界を代表する天野先生は、私にとっては「GR」に代表されるような、とにかくエモい旋律を歌い上げる曲のイメージですが、2000年代後半からはどことなくエモい旋律よりも、フランス風の和声やサウンドを重視した作品が多かったように思います。
私がこの曲を初めて聞いたときは、そんな天野先生の作品に日本人の心、というかコブシ?に響くアツいメロディーが帰ってきた!と非常に嬉しい気持ちになりました。エモさ満点で一度聞いたらヤミツキ間違いなしのこの作品、ぜひ聞いてみてください。
「シネマ・シメリック」の名盤・名演
「黄金コンビの熱演」2015年 文教大学吹奏楽部 佐川聖二指揮 金賞
「天野先生・佐川先生の組み合わせなら何を聞いても間違いない!」そう思わせてくれる名演です。「天野節」をここまでネットリと?歌い上げられる指揮者は佐川先生以外にはなかなかいないでしょう。
アゴーギグ(テンポの流動的な変化によってエモく歌い上げること)だけでなく、奏者一人一人の歌い上げが見事にブレンドしている点が本当に素晴らしいと思います。金賞に推薦した審査員にも拍手!
「アレンジが素敵!」2016年 柏市立柏高等学校 石田修一指揮 金賞
「天野作品と言えばイチカシ!」という名演。クライマックスのアレンジが個人的に非常に好きな演奏です。賛否は分かれていますが、それだけ効果的なアレンジだったと言えます。
高校バンドらしく、一糸乱れぬアンサンブルによって大音量ながらもスッキリと聞くことができる名演です。同じ年にこの曲で金賞を受賞した玉名女子の演奏と聴き比べるのも楽しいです!
大会CDでは玉名女子の名演とも聴き比べができます。好評だった大阪桐蔭の「ポーギーとベス」も収録されてます。
演奏について 〜読者の皆様から〜
天野作品特有の歌い込みと表現力がポイント
そこまで演奏に苦労する作品ではないので、表現に演奏の楽しさを見出したい作品です。良くも悪くも天野先生の吹奏楽らしい、トゥッティでのサウンドが物を言う作品ですので、サウンドトレーニングは欠かせないでしょう。
大変ドラマティックであるがゆえに、音量の変化やテンポの変化、味付けなどが「客観的に聴いてどうなのか?」という点は常に意識したいものです。「やりすぎ一歩手前」とはよく言ったものですが、そのあたりのさじ加減が指揮者の腕の見せ所でしょう。
個人的には大変の名スコアだと思いますので、細部のニュアンスまでしっかりと作り込み、大味にならないバンドオリジナルの世界観を作って欲しい作品です。